167話の表紙は、ドアの前に向き合ってしゃがみ込むアンドレアとリック。二人で額を合わせ、目を閉じています。アンドレアはリックの頬に手を当てて、リックはアンドレアの肩に手を乗せ、左手には銃を持っています。リックは辛そうな顔をしています。
ネタバレ
166話は、シェリーとの話し合いが成立せず、リックを殺そうと首を締めるシェリーをリックが突き飛ばし、シェリーはテーブルの角に後頭部を強打して、死亡してしまいます。その直後にアンドレアが部屋に入ってきて、ウォーカーズに噛まれたことを告げます。167話はそこからの続きです。
「おお、神様… アンドレア…」とリック。アンドレアは、額に汗を書いています。目も普段のアンドレアとは違います。
「ええ、噛まれてしまったの。」
リックは、目を閉じて涙を流しています。
「ごめんなさい。」、アンドレアがリックの胸に顔を埋めます。
「(あやまらないで)しないでくれ…」リックは涙が止まりません。
「しないでくれ… 」と力なく言うリック。アンドレアは姿勢を保つことができず、顔がリックの胸から腕の方に落ちていきます。
「アンドレア?」、「アンドレア!」目からは涙が滝のように流れ落ちています。
「誰か、私を助けてくれ!!」とアンドレアを抱きしめながら、泣き叫びます。
リックの声を聞いて、ミショーンが部屋の入口に飛び込んできました。「おお、神様。」ミショーンは、アンドレアを抱えて座り込んでいるリックのところに行きます。「彼女は– 彼女は、まだ息をしている。彼女は、ただ意識を失っただけだ。彼女は… 彼女は生きている。」とリックはミショーンに言います。
「彼女は、数時間前に噛まれたの。沢山のウォーカーズ達がいた。私達は、彼らを海に確実に落とすように導いた。彼女は、それが終わるまで立ち去ることはできなかった。」とミショーン。
リックは、涙を流しながら、「君は、彼女(先に戻るよう)にさせることはできなかったのか?
「おぉ、リック… (誰かが)アンドレアに何かさせることはできない。それが、あなたが彼女を深く愛している理由の一つでしょう?」
部屋の入口にDwightが来ました。「おお、」と言って、「シェリー!」と叫んで、倒れているシェリーの所に駆け寄ります。Dwightは、シェリーを抱きかかえて、「おお、神様… おお、神様… 」と言います。
「何を… 彼女が何をした?」とDwightは言いますが、アンドレアを抱きかかえたリックは無言、ミショーンは睨み返します。
リックは涙を流し続けながら、「彼女は私を刺そうとした。事故だ。」と言います。Dwightは、無言で険しい目で見返しています。
「私達は、彼女をベッドで寝かせる必要があるわ。リック、彼女を運ぶのを手伝って。」シェリーを抱きかかえるDwightに構わず、リックとミショーンは、アンドレアを抱えて、運ぼうとしています。
リックとミショーンは、アンドレアを抱えて、部屋から出て行きます。Dwightは、シェリーを抱えて座ったままです。Dwightは、不審感を持っている表情です。
ベッドに寝ているアンドレア。リックは、手を握って座っています。アンドレアが目をさましました。
「どうしてそうなったんだ?」
「ユージン… が囲まれた。私が十分注意していなかった。彼のせいではないわ。彼は、考案した方法で私達を救ってくれた。私はただ… 油断しすぎていた。」
「『私達は死なない… 』それで十分。」
「おお、神よ… 」リックは涙ぐんで沈痛な表情をします。
「止めて。」
「出ていって。あなたの惨めと一緒に出ていって。私は、ここに座って、私が死ぬまであなたが泣いているのを見たくない。お願いだから、ここでそれをしないで。」
リックは顔を押さえて、部屋から出ていきます。
「ママ?」とカール。神妙な面持ちです。
「こちらにいらっしゃい。そして、座って、息子。」とアンドレアは、手を少し上げて指で招いています。
「ダッド(親父)は、寂しい気持ちの人をあなたが見たくないと言っていた。とても難しいけど、僕はあなたの為に強く振る舞うよ。」
「あなたが男に成長していくことを見るだけ十分に長く生きる。チェックよ。」脂汗を流して、苦しそうですが、しっかりと言うアンドレア。
「おお、ママ…」と言ってカールは目を閉じ少しうつむきます。
「ヘイ、私がなんて言った?涙はなしよ。」
「俺は大丈夫。俺は大丈夫。」
「あなたは、まだあの子と一緒にいるの?」
「リディア?うん。彼女は… クールだ。」
「カール、私の話を聞いて。誰も特別ではない。」「人は、人がそこにいて、一緒にいる事に意味があると考える傾向があるわ。… でも、ほとんどの人が死ぬ前に、その事は重要でなくなる。」
「関係・結びつき… それはあなたが作るものよ。」意思の籠もった目で言うアンドレア。
「もし、あなたが誰かを愛すると、あなた自身も幸せになる… そして、そのことは、他の人を幸せにする。そして、あなたは幸せでい続ける。それが重要なことよ… 幸せでいること。」
「それが、誰もが最後に望むことよ。それが、皆が探していること。リディア… 誰でも、私達は全て同じよ。望めば、誰でも誰かを愛することができる。Daleは、私を幸せにした、そしてそれから、私は彼を失った。あなたのお母さんは、リックを幸せにした。そして、彼は彼女を失った。それから、私達は、お互いを見つけた。」
「私達は、お互いのために作られたわけではない。誰もそうではない。けれども、お互いを幸せにすることができる。それが重要なことよ。」
「今は、幸せでいることについて、考えることは難しい。」とカール。
「自分をごまかしてはだめ。(現実を直視するのよ)私は、ただの凄い長いリストの一人の名前でしかない。あなたは、大丈夫よ。… そして、その事をあなたは分かっている。」
「それが、更に悪くさせる。」と目に手を当てるカール。
アンドレアの寝ているベッドルームの外の廊下にリックはしゃがみこんでいます。ミショーンが隣りにいます。「カールは、中にいるの?」「ああ、彼らは話をしている。」「あなたは、気持ちを制御できているようね。」「かろうじてだ。ミショーン、私は、これからどうすればいいのか分からない。」
「あなたは、私達がいつもしてきた事、これまでしてきた事を、これからもする。生き続ける。」
「この後に?この全ての後に?」
「ええ。この後によ。過去に起こった全ての後に… そして、まだ起こっていないこと全ての後でもそう。 Ezekielを見つけた時に、あなたが私に言ったことを覚えている? 何か私に間違ったことがあると、私はあなたに言った。… なぜなら、彼から離れていて沢山の時間を無駄にしたから。」
「『我々全員、何か間違っているところはある』とあなたは言った。」
「それが、私達がどの様に受け取るかということよ。それが、ほとんどの人の気持を壊すことの後も続けていくことよ。それが、私達がどの様に生き続けるかということ。
それを聞いて、OKになった。… 沢山の他の人がそうでない中、生きていることについての罪悪感を少し感じなくなった。あなたが言ったことを、私は忘れない。もし、あなたが忘れたとしてもね。」
リックは、ミショーンの言うことを無言で聞いて、少し間をおいてから、「ありがとう。」と言います。
「私は、あなたのためにいつでもここにいるわ。私がいなくなるまで。」ミショーンは、リックの肩に頭をもたれて寄り添います。
両手で顔を塞ぐように押さえてユージンがやってきます。「すまない。本当にすまない。あれは… 全て私のせいだ… 」
「違う。そんなことで機能するものではない。止めるんだ。自分を取り戻せ。彼女は、そんな事を望んでいない。」と厳しい表情でリックは言います。リックの目には、涙はありません。
「本当にすまない。」と泣きじゃくるユージン。
「止めるんだ。」とリック。
二人はハグをします。「これは、誰のせいでもない。」とリック。
見舞いに来る人々
ユージンは顔に手を当てて、「私はバカだった。私が、後ろで残るべきではなかった。」、「もう良い。我々は彼女を休ませるべきだ。」とカール。
「あなたはいつも、私に優しかった。」とマグナ。「私達全てに。」とYumiko.
「僕達はあまり話はしなかった。そのことが残念に思う。僕は友達を作るのが得意ではない。」とヒース。
「Dwightはここに来たがっていた。でも、今、彼はセイバーズとのやり取りで忙しい。信じてもらえるか分からないけど、彼は彼らに片付けをさせている。」とローラ。
「あなたは私のことを好きではないと思う。でも、… 私はカールを傷つけることはしない。彼は私にとって特別だから。そのことをあなたに知ってほしい。」とリディア。
「外に出ていくのには沢山の道がある。何年も語り続けられていた物語だ。… それが、君に何らかの意味があるのならばね。」とジーザス。
「何を言えば良いかすら分からない。… あなたは… 私は、あなたがいなければここにはいなかった。誰もがそうよ。」とハーシェルを抱いて言うマギー。隣りにいるソフィアは黙って下を向いています。
「我々は、この場所を直ちにきれいに片付ける。今回の攻撃は… 道路のくぼみのようなものだ。」とビンセント。隣にジュリア。
「あなたは、私がここに属していると本当に感じさせてくれた。そのことについてお礼を言う。」とSiddiq。
「私はあなたのことをミスするわ。」とアニー。
「何か必要なことがあったら、何でも俺に言ってくれ。」とケリー。「私達はあなたに沢山の借りがあるわ。」とコニー。
「彼らは、俺があんたに会うことをさせようとしなかった。あんたはとんでもないやつだ。あんたは凄くホットだ。あんたに殺されたら、俺は光栄だ。」とニーガン。😉
「君に初めて会ったときのことを覚えている… 君はとても存在感があった。」とアローン。
「いつも、あなたに刀を作ろうと考えていた… お礼として。間にいつも割り込みが入ってくる。」とアール。
「あなたは、良い友達よ。私が得た中でベストの一人よ。」とミショーン。
「… 」リック。
アンドレアとリック
「君を救えなかった。… 」と目を閉じて言うリック。
「なん… で、私を救うのがあなたの責任なんて考えを持つの? それとも、あなたに私は救われる必要があるなんて考えてるの?」
「その様な意味で言ったのではない。」
「全てを私が犠牲にして、そしてそれらの犠牲者達から学んだ全ての後で… 我々が行ってきた全て… 世界をより安全にしようとして… 我々が変えて築いた全て… 君はまだ… 君が死にかけている。
君を。私は、君を守ることすら、できなかった。」
「私は死にかけている… 大問題よ。私は、特別ではない。私は不死身ではない。」
「私にとっても、凄く厳しいことよ。分かるでしょ?私達は、他の皆と同じよ。」
「人は死ぬ。私達は… 人間よ。」
「昔から人は死んできた。人は、常に死ぬ… これからも、人は常に死ぬ。その事は、変えることができない。止めることはできない。あなたや他の誰でもそうよ。でも、今、木の後ろに隠れているわけではない。怪物が来て、私を引き裂く前に出血多量で死ぬことを望んでいるのでもない。
私は、快適な私達の家のベッドにいる… 私はベッドの上で、私を愛する人に囲まれて、快適に死ねる贅沢を提供してもらっている。
それが、あなたがしてくれたことよ。」
リックは、無言です。
「あなたは、私達の軽い励まし合いの会話をミスする(恋しく思う)でしょう。」
リックはベッドルームの窓に向いて立っています。「私は、外で何が起こっているのかすら分からない。そのことについて考えてもいない。セイバーズは、シェリーについて、知ることになるだろう。」
「Dwightが対処しているわ。彼に任せる。」
「カール?」
「ごめんなさい。寝ていた。」とカール。
「ベッドに行きなさい… 寝るのよ。明日の朝に会いましょう。」とアンドレア。かなり、やつれています。
しばし、無言で、「分かった。愛しているよ。」とハグをします。
「君と一緒になって、私は、これほど近い人はかつていなかった。アンドレア、君は… 君は私の全てだ。そして… 」
「止めて。あなたは挨拶状を書いているように聞こえるわ。あなたが言いたいことは、私は分かっている。私達の間に、大声で言う必要のあることはない。私が知らないことはない。だから、私達は凄くうまくいっていた。」
リックは耐えられず、立ち上がって目頭を抑えます。アンドレアは苦しそうです。
リックは、アンドレアのおでこに濡れタオルを乗せます。アンドレアは寝ています。リックもうたた寝しているようです。
「うう… 」とアンドレアがうなされ声を上げます。リックは、泣きじゃくっています。
「私にはこれはできない。私は、続けていくことができない… このことの後にはできない。私は、女性を今日、殺した。彼女のグループが外にいて、我々を攻撃しようとしている状況になる。道はデッドでふさがっている。我々のゲートは倒れている。そして、君は死につつある。私は君なしでは、これ以上続けられない…」
「私は怯えている。私は疲れている。私は弱い。私はこれ以上できない。」と泣きながら言います。
「あなたはできる。そして、これからもできる!」
「人は、まだあなたが必要としている。あなたは、今までしたことを続けなければならない。あなたは、強くい続けなければならない。」アンドレアが体を起こして、必死に叫びます。
「そうでなければ… そうでなければ、全てしてきたことが無になってしまう… もし、これで全てが分解してしまったら… そして、あなた無しで… あなたがなぜ、必死に戦ってきたの?
あなたは、重要なことを築いた。あなたは、それのために何があっても、戦い続けなければならない。」
「人々は、あなたのことを頼りにしている。あなたは、暗い世界の中の光り輝く羅針盤でありつづけている… あなたは、この酷い世界の中に安息の場所を作った。」
「あなたは、人々が共に働くことができることを可能にした… コミュニティーとして… より強い… それがあなたをさらに強くしている。
あなたは、これからも前に進んでいく。そうしなければならない。それが、人々が必要としていることよ。それが、世界が必要としていることだわ。そして、それが… それが、あなたのすること。」
リックは、アンドレアの手を握って聞いています。
「本当に愛している。」リックの目には涙はありません。
アンドレアは横を向きます。目には涙が浮かんでいます。「ええ、あなたは愛してくれている。」アンドレアの目から涙がこぼれています。
リックは、アンドレアの手を握って、ベッドサイドに座っています。朝日が差し込んで二人を照らしています。リックは俯いて涙を流しています。顔を上げたリックの目の前には、息を引き取ったアンドレアの顔があります。
リック目からは、涙がとめどなく流れています。目を閉じて苦痛に満ちた顔をしながら、短銃を手にします。そして、苦悩と戦いながら短銃をアンドレアの頭に向けます。しかし、銃を持った手を降ろし、テーブルに置き、顔を手で覆って泣いています。
「私にはできない…」と言ってアンドレアに賭けられているシーツを持ち上げ、「私には、これ以上できない。」と言ってアンドレアを抱きしめます。「君なしではできない。」アンドレアを抱きしめてリックもベッドに入ります。
アンドレアの隣で、「これは、私ではない。」「私は、(本当の)自分より強く振る舞うことはできない。」
アンドレアを抱きしめて、「私は、これを続けていくことはできない。… 恐怖を超えて自分を押し出し、境界線を超えることを自分に強いること。」
「あまりにも多くの他の人ができずにいる時に、生き残るために自分を強いること。」
「私は、たった数時間前に、女性を殺した。これは、私がなりたい人間ではない。」と目を閉じて言います。
そして、目を開いて上半身を起こして、「私にはこれはできない。」、「私は、これ以上できない。」と言ってうつむきます。
その時、アンドレアがデッドとして蘇ります。「おお、神よ。」立ち上がるリックに、デッド化したアンドレアが近づいて、リックの首を噛もうとします。リックは、動きません。しかし、次の瞬間、デッドとなったアンドレアを引き離します。小競り合いが続きます。
倒れたリックの上にアンドレアがのしかかります。
「アンドレア…」、「アンドレア」
リックは、短銃を手にとって、アンドレアの顔に当てます。リックは、目を閉じて泣いています。
「No!」と言って、銃を放り出します。
再びもみ合いとなります。
リックは泣きながら、腰のナイフを取り、泣きながらアンドレアのこめかみを刺します。アンドレアの動きが止まります。ベッドに顔を伏せて泣いた後、アンドレアの頭の傷に布を当てます。一瞬、放心状態となった後、アンドレアの傍らにしゃがんで、手を顔に当てて泣き続けます。
再び、放心状態のニック。暫くの間、しゃがんで動かずにいます。そして、立ち上がり、部屋から出て、階段を降りていきます。
「カール?」
階下には誰もいません。
リックが家のドアを開けて外に出ると、皆が立っていました。
リックは皆を見ます。
皆泣いています。
リックはうつむきながら、カールの所にやってきます。
「本当に残念だ。父さん。」とカール。
リックはカールに抱きつきます。
カールの背中に手を回して、リックは泣いています。
リックはしゃがみ込みます。
「すまない。私は — 」
カールはリックの肩に手を乗せています。ミショーンも手を伸ばしています。そして、リックを中心に、皆が肩に手を乗せて繋がっています。
リックは立ち上がります。
リックが歩き始めます。
「私に付いて来てくれ。」
「やることは、まだたくさん残っている。」とリックが振り返って言います。
感想と考察
167話のタイトル、”A Certain Doom”のdoomは、通常、悪いことに関連する運命、悲運、宿命、死と言うような意味の言葉です。certainは、確かなと言う意味で、doomを修飾しています。
アンドレアにとって、死が避けることのできないものであること、アンドレアを失ってもコミニュティーを導くことが宿命であるリックの二人にかかるタイトルとなっていると思います。
アレクサンドリアは、リックと運命共同体と言っても過言ではないところがあるため、アレクサンドリアのコミュニティーにとっても、”A Certain Doom”であると言えます。
本話は、通常よりも大幅な増ページとなっており、最後のシーンの次には、作者のRobert Kirkmanから読者への手紙が掲載されている異例の構成と取扱いになっています。ウォーキングデッドにおけるアンドレアの存在の大きさとインパクトを示しています。
正直に申し上げて、今後のストーリー展開において、アンドレア無しで話が進むウォーキングデッドと言うのは、大きな損失と言えます。その意味では、167話のタイトルは、ウォーキングデッドの今後に向けての”A Certain Doom”でもあると思います。
166話では、セイバーズの現リーダー、シェリーとの話し合いが成り立たず、シェリーがリックを殺そうとして、結果的に逆に頭を打って死んでしまうという事故が発生しました。
その後に、部屋に入ってきたのがアンドレアで、ウォーカーズに噛まれてしまったことを、リックに告げます。リックの助けを求める声に、最初にやってきたのはミショーンでした。続いてDwightが現れます。Dwightは、シェリーが倒れていることに気づいて、駆けつけますが、シェリーは息を引き取っています。ショックを受けるDwightに、リックは事故だった告げますが、Dwightは訝しく思います。
リックは、アンドレアのことで頭が一杯の状態です。166話でDwightは、双方が銃を降ろしても、シェリーが先頭にいるセイバーズ達に銃を向けて、彼らは信用できないと言いますが、元妻であるシェリーに対する想いが残っていることを表しています。この様な登場人物の複雑な心理描写や人間関係などを巧みに描くところも、ウォーキングデッド コミックの魅力です。
ベッドに運ばれたアンドレアとリックの会話で、リックが涙ぐむとアンドレアは出ていくように言います。アンドレアは、本当に強い女性です。カールが入ってくると、カールと話をします。お別れの最後の話だということをお互いに分かっています。リックは、部屋の外でしゃがんでいます。ミショーンは、隣でリックを励ましています。
そこに泣きじゃくりながら、ユージンが現れます。リックは、アンドレアには怒られて部屋から追い出されましたが、ユージンの様子を見て、毅然とした態度を取ります。
人は異なる持ち味を持っています。強い所と弱い所もあります。得意と不得意な分野もあります。その様な、人間の強さや弱さと人同士のふれ合いによって、強くなれる、改めて身の振り方を考えるようなところも、上手に演出しています。
アンドレアへの見舞いのシーンもそれぞれの性格や個性を表しています。見舞客の中に、ニーガンも含まれている所が良かったです。
圧巻はアンドレアとリックとの会話です。リックは、コミュニティーの住民から、慕われ、頼りにされて、信望の厚いリーダーです。しかし、この様な状況の中で、アンドレアに対して弱音を吐きます。アンドレアは、気丈な女性です。弱音を一切言わずに、最後の力を振り絞って、リックを叱咤激励します。
リックが心の底から愛していると言って、アンドレアも分かっていると答えたのが二人の最後の会話となります。
アンドレアが息を引き取った後、リックは自暴自棄の状態になりますが、最終的には、デッド化したアンドレアを安息させます。
アンドレアの最後を見送ったリックは、164話でニーガンがリックに明かしたニーガンにとって最悪の事、彼の妻を永眠させることができなかったこととの対比にもなっています。
力なく部屋から出て、階段を降りて、カールを呼びますが、カールは室内にはいません。リックがドアを開けて外に出ると、親しい仲間たちが外に集まっていました。
そして、リックはカールと抱き合って、うずくまります。しかし、そこから、アンドレアがリックに送った言葉が、リックと皆を導きます。リックを中心に、仲間たちが、肩に手を乗せて繋がります。
アンドレアの言葉を思い出しながら、リックは立ち上がります。リックは前に向かって歩き出し、皆についてくるように言います。そして、振り返って「まだ、することはたくさんある。」と言います。
アンドレアの言葉を心に刻みこんで、リーダーとしてリックは引き続き進んでいく覚悟を示しています。
英語版ウォーキングデッド コミック 167話
Amazonでは、原語の英語のペーパーバックやKindle版もAmazonで入手できます。ウォーキングデッド、オリジナルコミック167話(英語)は、Kindle版で購入可能です。
Kindle版は、1話単位で購入できます。価格も比較的廉価です。
ストーリーを楽しみながら、英語に馴染む素材としたり、英語の勉強を兼ねて読むのも一つの選択肢です。その様な楽しみ方のサポートをできればと考えて、本サイトでも1話ごとのあらすじと感想、考察の記事を投稿しています。
英語版のペーパーバック、またはKindle版を入手して、本サイトの記事をコンパニオンとしてご利用頂ければ、幸いです。
167話 英語のイディオム
kid yourself
ベッドで寝ているアンドレアとカールの会話、アンドレアがカールへの最後の言葉を送ります。「私達は互いを幸せにすることができる。それが、重要なことよ。」と言うアンドレアに対して、カールは「今、幸せであることについて考えることは難しい。」(“It’s hard to think about being happy right now.”)と言います。それに対して、アンドレアは、”Don’t kid yourself.”とたしなめるように言います。
kid yourselfは、事実(本当)でない何らかのことを自分自身で信じさせようとすることです。現実から逃避するようなことを意味します。Don’tを付けて否定することで、「現実から目をそむけない。」、「事実を直視するのよ。」と言う意味となります。